【レポート】清和台の森にて、森の茶会を開催しました
自然の循環の中にある建築
万博終了後に、「森になる建築」の移設が予定されている「清和台の森」は、兵庫県川西市にある竹中研修所です。研修所は、「日本一の里山」といわれる黒川地区に隣接し、その昔から続く里山管理に学びながら研修所内の森を里山として再生する清和台の森づくりが進められています。清和台の森は、2014年3月に環境省の「自然共生サイト」に認定されました。
そんな清和台の森に、「森になる建築」の3Dプリント実験の中でつくられたモックアップ(模型)を設置。モックアップを茶室に見立て、森で採取した植物から野草茶をつくり、中に入ってお茶を味わう、森の茶会を行いました。

茶室として設えられた「森になる建築」モックアップ。 Photo:Natsumi Kinugasa
野草を使った茶会をするにあたり、日本の植物を使った「伝統茶」の商品開発などを手がけられている、薬草調合師の新田理恵先生(伝統茶 {tabel}代表)に監修していただき、森の中でお茶にできる野草を探し、採取して乾燥させるところから始めました。

新田理恵先生(伝統茶 {tabel}代表)Photo:Natsumi Kinugasa
森の中で野草を摘むところから
お茶を味わう前に、みんなで森の中を散策しながら実際に植物の採取体験も行いました。新田先生からお茶にできる植物やその効能についてお話いただいたり、森を管理している陶山所長から葛の繁殖が大変という現場での苦労話を聞いたり、事前に森の植生調査をした際に人と自然の博物館の橋本先生から教えていただいた植物の面白い話や、採取の際に個体を傷つけないための注意点をみなさんにお話しながら森を巡ると、少し違った視点で森や植物を見られるように。

いいお天気の中、森を歩きながらお茶にできる植物を採取しました。Photo:Natsumi Kinugasa

森の中を歩いたので、よく見るとくっつき虫がたくさんついています。Photo:Natsumi Kinugasa

葛や露草など、いろいろな種類の野草が採取できました。Photo:Natsumi Kinugasa
野草茶のブレンド体験
森を散策した後、研修センターの建物内で野草茶のブレンド体験をしました。用意された5種類のお茶は、どの野草からつくられたものかが伏せられており、飲み比べるとそれぞれの野草ごとの個性ある味わいが楽しめました。好みの味を見つけたら、それらを組み合わせてブレンドを試してみます。最後に答え合わせをすると、身近な植物がこんなに美味しいなんて!とおどろきの声も上がってきました。

5種類の野草茶を一口ずつ試飲。Photo:Natsumi Kinugasa

好きなお茶をじっくり選びます。人によって好き嫌いが分かれるお茶も!Photo:Natsumi Kinugasa

自分だけのブレンドティーが完成。Photo:Natsumi Kinugasa
モックアップの中でお茶会
森に設置されたモックアップの中でお茶会をしました。お茶会では、新田先生と参加者が一緒にブレンドしてその場だけのオリジナルのお茶を淹れていただき、上品で美味しい野草茶の味を楽しみました。

森の中に設置されたモックアップ。この日は特別に茶室として設えています。Photo:Natsumi Kinugasa

清和台の森がある兵庫県川西市の特産、菊炭を使用。里山と人の営みの中で伝統的につくられてきた、特別な炭です。Photo:Natsumi Kinugasa

「森になる建築」はまるい形をしていて、音が反響して聞こえます。お茶を注ぐお湯の音や炭のパチパチという音、野草茶のやさしい香りに包まれます。Photo:Natsumi Kinugasa

小さな空間ですが、おこもり感があって居心地が良く、楽しくお茶を飲みました。Photo:Natsumi Kinugasa
3Dプリントでつくられた構造体は透明な細い層になっていて、その外側に薄い紙が貼られ、重なりあう様子が中から透けて見えています。紙の重なりあいに、木漏れ日もゆらゆら揺れて、見たことのないふしぎな魅力ある空間になっていました。みんなでお茶の味を楽しみながら、ゆっくり過ごしてみることで、空間の良さも改めて感じました。

建築に木漏れ日が写り、ゆらゆらゆれています。Photo:Natsumi Kinugasa

自然光が気持ちのいい空間でした。Photo:Natsumi Kinugasa
森からできて、森にかえる
森の素材からできて、最後は森にかえる「森になる建築」。建築がかえる森の野草でお茶をつくり、味わうことで、私たちが自然の循環の中にあるということを改めて感じました。
万博期間中も、野草茶のイベントを行う予定です。イベントの詳細はHPやInstagramでお知らせします。お楽しみに!

モックアップの前で、新田先生と参加者のみなさんと記念撮影。Photo:Natsumi Kinugasa